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旭川地方裁判所 昭和36年(ワ)491号 判決 1965年3月31日

主文

1  被告は原告に対し金二二六万四、九九八円およびこれに対する昭和三六年七月二一日から完済に至るまで一〇〇円につき一日金八銭の割合による金員を支払え。

2  原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用は、これを四分し、その一を原告、その余を被告の各負担とする。

4  この判決は、第一項に限り、原告において金二〇万円の担保を供することを条件として、仮りに執行することができる。

事実

原告訴訟代理人らは、「被告は原告に対し金二七四万七、七五二円およびこれに対する昭和三六年七月二一日から完済に至るまで一〇〇円につき一日金八銭の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決ならびに担保を供することを条件とする仮執行の宣言を求め、つぎのとおり述べた。

(請求の原因)

一、原告は、昭和三四年二月二〇日被告に対し金三一五万円を弁済期は同年四月二〇日、利息は一〇〇円につき一日金八銭の約定で貸与した(以下、これを本件貸金という)。

二、しかるに、被告は原告に対し元金四〇万二、二四八円と昭和三六年七月二〇日までの利息および遅延損害金とを支払つたのみで、その余の支払いをしない。

よつて、原告は被告に対し金二七四万七、七五二円とこれに対する昭和三六年七月二一日から完済に至るまで一〇〇円につき一日金八銭の約定利率による遅延損害金との支払いを求める。

(抗弁に対する答弁)

三、被告主張の抗弁二の事実のうち、被告が原告に対し金二二〇万円を支払つたほか、昭和三六年七月一五日金一〇〇万円を支払い、合計金三二〇万円を支払つたことは認めるが、その余は否認する。原告が右金員のうち金二二〇万円の支払いを受けたのは、昭和三五年一二月一日である。

四、右金三二〇万円の弁済充当の関係を説明すると、つぎのとおりである。

(一)、原告は被告に対し本件貸金債権のほか、つぎのとおり別口の各債権を有していた。

(1)、原告が昭和三三年五月二一日被告に対し金二五〇万円を弁済期は同年六月二〇日、利息は一〇〇円につき一日金八銭七厘の約定で貸与したことによる貸金債権(以下、これを二五〇万円口貸金債権という)。

(2)、原告が昭和三四年二月二七日被告に対し金五〇万円を弁済期は同年四月五日、利息は一〇〇円につき一日金八銭の約定で貸与したことによる貸金債権(以下、これを五〇万円口貸金債権という)。

(3)、原告は被告から金融の依頼を受け、昭和三五年一二月一九日被告と連帯して上川産業株式会社(以下、これを上川産業という)から金六〇万円を利息は一〇〇円につき一日金二〇銭の約定で借り受け、同日これを被告に交付した。その際、原告は被告との間において、上川産業に対する右借受金の返済は原告が行い、原告は被告からその求償として右借受金と同額の元利金の支払を受ける旨の求償契約を結んだが、右契約にもとづく求償債権(以下、これを六〇万円口求償債権という)。

(二)、原告は、本件貸金を貸与した際、被告との間に、被告の支払金額が債権全額に満たないときには、それを弁済期の先に到来した債権から順次に充当してゆき、同一債権の中では、利息、遅延損害金、元本の順序で充当する旨を約定し、前記金五〇万円を貸与したころ、右充当の約定を再確認した。その後、上川産業から前記金六〇万円を借受けたころ、原告は被告との間に、右借受金の金利が高いので、原告の被告に対する前記求償債権については前記三口の貸金債権に優先して弁済充当する旨の特約をした。しかして、原告は、被告から別表一の第一段「被告が原告に対し支払つた日と金額」の欄の(1)ないし(26)記載のとおり(但し年月日順としては、(1)ないし(20)、(23)ないし(26)、(21)、(22)の順)、前後二六回に互つて前示四口の債権に対する弁済として金員の支払を受けたが(以下、右の各支払金については、右の番号を以つて略称することがある。被告からの前示支払金二二〇万円及び一〇〇万円はそれぞれ(20)、(21)に当る。なお、同一番号のものは別行に記載されているものでも同一の支払金である)、右支払金は、前叙の如き弁済充当の合意ないし特約によつて同表の第二段以下に記載のとおり前示各債権の弁済に充当された。

(被告の後記四の主張に対する答弁)

五、被告主張の別表二の(27)記載の支払は、原告が昭和三四年三月一一日被告から前記二五〇万円口貸金債権についての弁済を受けるため額面金一〇万円の約束手形一通の交付を受けたことを指すものであり、原告は同年五月一〇日右手形金の支払いを受けたものであつて、これが原告主張の(4)の支払金である。したがつて、(4)の支払以外に右(27)の支払があつたとすることはできない。別表二の(28)、(29)各記載の支払は、それぞれ、原告が被告主張の日に前示二五〇万円口貸金債権についての弁済を受けるために被告からその主張の金額を額面金額とする約束手形各一通の交付を受けたことを指すものであり、原告は同年五月一日右各手形金の支払いを受けたものであつて、これが原告主張の(2)、(3)の各支払金である。従つて、(2)、(3)以外に右(28)、(29)の支払があつたとすることはできない。別表二の(30)記載の支払は、原告が昭和三四年三月二八日被告から前示二五〇万円口貸金債権についての弁済を受けるため額面金二五万円の約束手形一通の交付を受けたことを指すものであり、原告は同年四月一八日右手形金の支払を受けたものであつて、これが原告主張の(1)の支払金である。したがつて、(1)以外に右(30)の支払があつたとすることはできない。別表二の(31)記載の支払のあつたことは、否認する。別表二の(32)記載の金員を受け取つたことは認めるが、これは原告が昭和三六年三月一三日宮田敏雄に対し被告の仲介によつて売却した家屋の代金一五〇万円の一部として被告が宮田に代り原告に対し支払つたものであり、本件貸金債権ないし前示各債権とは全く関係がない。

以上のとおり述べた。

証拠(省略)

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。」との判決を求め、つぎのとおり述べた。

(請求の原因に対する答弁)

一、原告主張の請求の原因一の事実のうち、原告が昭和三四年二月二〇日被告に対し金三一五万円を弁済期は同年四月二〇日の約定で貸与したことは認めるが、その余は否認する。本件貸金には、利息の定めはなかつた。

(抗弁)

二、被告は、原告に対し本件貸金債権に対する弁済として、昭和三五年一一月三〇日金二二〇万円、同三六年七月一五日金一〇〇万円合計金三二〇万円を支払つたので、本件貸金債務は消滅した。

(原告の四の主張に対する答弁)

三、原告主張の二五〇万円の貸金の事実は否認する。もつとも、被告は、昭和三三年五月二一日原告が島田豊次郎に対し金二五〇万円を貸与するにつきその斡旋をしたことがあり、原告はこれを被告に対して貸与したものと強弁しているのである。原告主張の五〇万円口貸金の事実については、そのうち、 利息の定めのあることのみ否認し、その余は認める。原告主張の上川産業関係の事実については、そのうち、原告が昭和三五年一二月一九日上川産業から金六〇万円を借り受けたことのみ認め、その借受金につき利息の定めがあつたかどうかは知らず、その余はすべて否認する。被告は、上川産業に対し原告の上川産業に対する右借受金返済債務について連帯保証をしたにすぎない。

四、原告の主張四の(二)の事実のうち、原告主張の如き弁済充当の約定ないし特約があつたことは否認する、被告が原告に対し前示弁済の抗弁にかかる金員(別表一の(20)、(21)の支払金、但し(20)の金員の支払日は前叙のとおり昭和三五年一一月三〇日)のほか、別表一の(1)ないし(4)、(6)ないし(9)、(11)ないし(19)、(23)ないし(26)の各金員を支払つたことは認める。しかしそれは別表二の下段に記載の如き趣旨で支払つたものである。右のほか被告は原告に対し別表二の上段の(27)ないし(32)記載のとおりの金員を支払つた。そして、支払の趣旨は、別表二の下段に記載のとおりであつて、原告主張の二五〇万円口貸金債権(但しそれが原告主張のとおり存在したとして)、及び五〇万円口貸金債権は、被告が前示弁済の抗弁にかかる(20)の支払金を支払つた当時までに既に完済されて消滅していたものである。

以上のとおり述べた。

証拠(省略)

理由

一、原告が昭和三四年二月二〇日被告に対し金三一五万円を弁済期は同年四月二〇日の約定で貸与したことは、当事者間に争いがなく、原告本人尋問の結果(第一回)によつて真正に成立したと認められる甲第二号証の一、二の記載と証人平トクの証言および原告本人尋問(第一回)の結果とを合せ考えると、原告は被告に対し右金三一五万円を利息は一〇〇円につき一日金八銭とする約定のもとに貸与したことが認められ、右認定に反する被告本人の供述は信用することができないし、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

二、そこで被告の弁済の抗弁について判断する。

(一)、本件貸金の弁済としてか否かの点はしばらく措き、被告が原告に対する債務の弁済として金二二〇万円を支払つたほか、昭和三六年七月一五日金一〇〇万円を支払い、合計金三二〇万円を支払つたことは、当事者間に争いがない。右金二二〇万円の弁済日については、被告本人尋問の結果により真正に成立したと認められる乙第三号証の一、二、前記甲第二号証の一、二の各記載、被告本人尋問の結果および原告本人尋問(第一回)の結果を合せ考えると、被告は昭和三五年一一月三〇日金二二〇万円を旭川信用金庫銀座支店の原告の預金口座へ振り込み、原告は翌日の同年一二月一日この通知を受けこれを了承したことが認められるから、原告は右通知を受けてこれを了承したとき、すなわち昭和三五年一二月一日に右金員を受領したものと解するのが相当である。

(二)、被告は、前段判示の二二〇万円と一〇〇万円は本件貸金の弁済として支払つたものであると主張し、これに対し原告はその主張の如き別口の債権の存在したことを前提として被告の右主張を争つている。そこで、まず、原告の主張する別口の債権があつたかどうかについて考察してみる。

(1)、前記甲第二号証の一、二、真正に成立したことに争いのない甲第一号証、同第八号証の各記載、証人平トクの証言、および原告本人尋問(第一回)の結果を合せ考えると、原告は昭和三三年五月二一日被告に対し金二五〇万円を弁済期は同年六月二〇日、利息は一〇〇円につき一日金八銭七厘の約定で貸与したことが認められ、右認定に反する被告本人の供述は右の各証拠に照らして信用することができず、他に右認定に反する証拠はない。

(2)、原告が昭和三四年二月二七日被告に対し金五〇万円を弁済期は同年四月五日の約定で貸与したことは、当事者間に争いがなく、前記甲第二号証の一、二の記載、証人平トクの証言および原告本人尋問(第一回)の結果によると、右貸借において利息は一〇〇円につき一日金八銭とする約定であつたことが認められ、右認定に反する被告本人の供述は右の各証拠に照らして信用することができず、他に右認定の妨げとなる証拠はない。

(3)、前記甲第二号証の一、二、証人横堀留七の証言によつて真正に成立したと認められる甲第三号証の各記載、証人横堀留七の証言および原告本人尋問(第一回)の結果を合せ考えると、原告は昭和三五年一二月一九日被告から金融を依頼されて自ら貸すことは断つたが、上川産業の社長横堀留七に被告に対する金銭の貸付けを依頼したところ、同人から「被告とは取引きがないから、被告に貸すことはできないが、原告になら貸す。」との話しがあり、被告からも重ねて頼まれたので、同日被告と連帯借主となつて上川産業から金六〇万円を利息は一〇〇円につき一日金二〇銭とする約定で借り受け、同日金六〇万円全額を被告に交付して使用させ、その際、原告は被告との間に、上川産業に対する右借受金の返済は原告の責任で行い、被告は原告に対し原告が右返済に要した、ないしは要する出損の求償として金六〇万円及びこれに対する右借受の日からその支払済に至るまでの日歩二〇銭の割合の利息を支払う旨の契約(以下、これを求償契約という)を締結したことが認められる。被告本人尋問の結果により、原、被告間の金銭貸借についての被告作成のメモと認められる乙第三号証の二には、「十二月二十日六十万円、二五万円入 差引参拾五万円」という文字を線わくで囲んだ記載がある。この記載の趣旨は、被告が原告から昭和三五年一二月二〇日右認定の金六〇万円のうち金二五万円しか受け取らなかつた趣旨であると解する余地がないわけではない。

しかし、その作成者である被告は、その本人尋問において、右記載は被告が原告に対し金六〇万円を貸与し、その日または翌日金二五万円の弁済を受けたことを書き留めたものであると、供述し、これは右の趣旨とは全く異なるものであることおよび前記甲第二号証の一、二の記載と原告本人尋問(第一回)の結果とに照らして考えると、乙第三号証の二の前記記載が仮に前記のような趣旨のものであるとしても、右記載は真実に合致したものとは到底認められない。なお、真正に成立したことに争いのない乙第五号証の一、二、三の記載によると、被告は昭和三五年一二月一九日当時旭川信用金庫に金一一二万余円の預金を有していたことが認められるが、他方真正に成立したことに争いのない甲第一〇号証の供述記載、証人丸谷利雄の証言を合せ考えると、被告は旭川信用金庫に対し昭和三五年一一月三〇日当時約三三〇万円、同年一二月二六日当時約四三〇万円の債務を負つていたことが認められ、右証拠に弁論の全趣旨を総合すると、前記認定の旭川信用金庫に対する被告の預金は、同金庫に対する被告の債務の引当てとされ被告においてこれを自由に払い戻すことはできない状態にあつたものと推測するに難くないから、右預金のあつた事実は、被告が原告と連名で原告の信用によつて上川産業から金六〇万円を借り受け、原告からその交付を受けたとの前記認定を妨げるものではなく、他に右認定をくつがえすに足りる証拠はない。

(三)、さて、被告が(一)で判示の二二〇万円及び一〇〇万円を原告に支払うにつき、原告との間に、これを本件貸金に対し弁済する旨の合意をしたこと、ないしは被告もしくは原告からこれをどの債権に充当するかについての指定の意思表示をしたことを認むべき証拠はない。而して、被告から原告に対する支払金の充当に関しては、前示甲第二号証の一、二の記載及び原告本人尋問(第一回)の結果によると、原、被告間において原告主張の頃その主張の如き弁済充当の合意ないしその再確認及び優先充当の特約を為したことが認められる(もつとも、前示甲第二号証の一、二の記載によると、原告はその主張の別表一の(20)の入金に限り、右認定とは牴触する充当仕訳をしており、本訴における主張も亦右と同様であるが、この事実は未だ右認定を覆すに足りない。被告本人の供述中、右認定に反する部分は信用することができず、他に右認定に反する証拠はない)から、本件貸金の弁済があつたかどうかは、前記判示の二二〇万円及び一〇〇万円を含めて被告から原告に対して為された債務支払金のすべてにつき、右認定の弁済充当の合意ないし特約並びに利息制限法の規定によつて、本件貸金債権を含む前示四口の債権に対する弁済充当の関係を決定した結果を俟つて判断しなければならない。

(四)、そこで、先ず被告から原告に対する本件貸金債権を含めての前記四口の債権に対する支払関係(充当関係は、しばらく措く)について判断する。

被告が原告が原告に対し、前記判示の二二〇万円と一〇〇万のほか別表一の(1)ないし(4)、(6)ないし(9)、(11)ないし(19)、(23)ないし(26)各記載の日各記載の金員を支払つたことは、当事者間に争いがなく、別表一の(5)、(10)、(22)各記載の日各記載の金員を支払つたことは、原告の自陳するところである。別表一の(20)、(21)に記載されているのは、それぞれ前記判示にかかる二二〇万円と一〇〇万円の支払金である。而して以上いずれの支払いも、被告において前示四口の債権に対する支払として任意にこれをしたものであることは原告本人(第一回)の供述と弁論の全趣旨に照らして明らかである。

被告は、右以外にも、別表二の(27)ないし(30)に各記載のとおり原告に対して支払をしたと主張し、前示、乙第三号証の二の記載、乙第二号証の記載のうち、被告が被告の作成したものと主張する鉛筆書きの部分には、右の主張に合致した記載があり、また被告本人の供述中にも右の主張にそつた部分がある。しかし、前記甲第二号証の一、二の記載、原告本人尋問(第一回)および被告本人尋問の各結果に乙第三号証の二におけるこの点に関する記載の体裁を合せ考えると、被告は別表二の(27)ないし(30)各記載の日原告に対し右各記載のとおりの額面の約束手形を交付し、右記載の日を乙第三号証の二に、支払日として記載したものであること、これらの手形につき原告は、別表二の(27)については別表一の(4)、別表二の(28)については別表一の(2)、別表二の(29)については別表一の(3)、別表二の(30)については別表一の(1)各記載の日それぞれ手形金の支払いを得たこと、被告はその後原告から交付を受けた乙第二号証(被告から原告への入金を原告がペン書きしたもの、右手形による支払いについては原告は手形金受領の日をもつて入金日としている)の記載にもとづき乙第三号証の二の記載の行間の余白に「四月十八日 道北 弐拾五万円、五月一日竜谷手形 五五万円」という記載を挿入し、また「五月一七日拾五万円」と記載してあつたものの一部を削除して、「五月十日拾万円」という記載に改ざんし、乙第三号証の二の記載上あたかも別表一の(4)、(2)、(3)、(1)各記載の支払とは別に別表二の(27)ないし(30)各記載の支払をもなしたかの如き体裁を作出したこと、乙第二号証の記載のうち欄外の鉛筆書きの部分は乙第三号証の二の記載にもとづいて被告が記入したものであることがそれぞれ認められ、したがつて、被告は前示の如き手形交付を以つて前示の如き支払をしたと主張しているものと認められるから、別表一の(4)、(3)、(2)、(1)各記載の支払のほかに、別表二の(27)ないし(30)各記載の支払があつたものとすることはできない。右認定に反する被告本人の供述部分は到底信用することができない。

さらに、被告は、別表二の(31)記載のとおり昭和三五年一二月二〇日金三五万円を原告に対して支払つたと主張する。これについては、前示乙第三号証の二の記載中に「一二月二十日六十万円二十五万円入差引参拾五万円」という文字を線わくで囲んだ記載のあることは既に述べたとおりであるが、右記載はその余の記載部分と対比し何か不自然で殊更に記入されたものの感があるのみならず、これについて被告がその本人尋問で釈明するところは、右主張と全く趣旨を異にするものであることこれ亦既に述べたとおりであり、従つて右乙第三号証の二の記載を以つて右主義を認めることはできず、他に右主張を認めるに足りる証拠はない。

最後に、被告が原告に対し別表二の(32)記載のとおり昭和三六年五月一日金五万円を支払つたことは、当事者間に争いがないが、真正に成立したことに争いのない乙第一号証、同甲第五号証の各記載、証人宮田良雄の証言および原告本人尋問(第一回)の結果によると、原告は昭和三六年三月一三日被告の仲介によつて原告所有の家屋を宮田敏雄に代金一五〇万円で売り渡し、同日内金五〇万円の支払いを受け、同年五月一日残代金の請求をしたところ、宮田敏雄は原告に対し残代金一〇〇万円の内金五〇万円について同額面の小切手を交付し、被告は原告に対し宮田敏雄のために残代金五〇万円の一部として金五万円を支払つたことが認められ、右認定をくつがえすに足りる証拠はない。したがつて、右金五万円の支払いは、前記四口の債権の弁済とは全く関係のないものである。

以上のとおりであるから、結局被告から原告に対し本件貸金債権を含む前記四口の債権に関して為された支払は、原告主張の如く別表一の(1)ないし(26)に各記載のとおり(支払順は(1)ないし(20)、(23)ないし(26)、(21)、(22)の順)となる。なお、別表三の最上段は、右認定の支払関係を別表一の最上段から転記したものである。

(五)、ところで、前示(三)の後段に認定の原、被告間に為された弁済充当についての合意ないし優先弁済の特約によれば、原告に対する被告の支払金はその支払の為された都度、原、被告が上川産業から金六〇万円を借受けた昭和三五年一二月一九日以前においては、左記の順に、即ち弁済期が最初に到来した前示二五〇万円口貸金債権についての日歩八銭七厘の割合による利息、同債権についての同割合による遅延損害金、同債権元金、弁済期が次に到来した前示五〇万円口貸金債権についての日歩八銭の割合による利息、同債権についての同割合による遅延損害金、同債権元金、弁済期がその次に到来した本件貸金債権についての日歩八銭の割合による利息、同債権についての同割合による遅延損害金、同債権元金の順に順次充当され、昭和三五年一二月一九日以降においては、先ず上川産業からの前記借受金返済に関する前示求償契約に基づく原告の被告に対する元金六〇万円、利息日歩二〇銭の割合の求償債権に対して優先的に充当され、その弁済を了した後は、再び前記貸金債権(弁済未了で残存しているものに限ることは勿論である)に対して前記の如き順序で充当されたことになる。

(六)、しかしながら、本件貸金債権を含む前示三口の貸金についての前示約定利は、いずれも利息制限法一条一項所定の制限(二五〇万円口の貸金と本件貸金については年一割五分、五〇万円口貸金については年一割八分)を超過し、また右二五〇万円口貸金についての前示約定利率は同法四条一項所定の制限(年三割)をも超過しているので前示各貸金における利息の約定は右超過部分に関する限り無効である。従つて前段説示の如き弁済充当により被告が右制限超過部分の利息および遅延損害金として支払つたことになるものは、当該部分の弁済として無効であり、この場合その支払いは、当該利息または遅延損害金を生じた貸金債権に対して、その債権のどの部分に対してとも特定せずに、即ち利息に対してとか遅延損害金に対してとか、元金に対してとかを特定せずに支払をし原告もこれを異議なく受領したのと同視すべきであるから、当該支払部分は、民法四九一条の規定に則つてその支払の際に、もし、当該債権につき既に発生している利息ないし遅延損害金の未払部分があれば弁済期到来の順に、先ずその部分に充当し、かかる部分がないか、ないしはそれに充当してなお余りがあれば、これを当該債権の元金に充当されるべきである(最高裁判所昭和三五年(オ)第一一五一号、昭和三九年一一月一八日大法廷判決参照)。また原、被告両名の上川産業からの前記借受金についての前示約定利率も利息制限法一条一項所定の利率制限(年一割八分)を超過しているから、右借受金についての利息約定は制限超過部分に関する限り無効であり、右無効部分による利息債務の存在しないことはいうまでもない。而して原、被告間に為された前記認定の求償契約は、原告の責任で弁済し、以つて原、被告共同の免責を得べきものとされた前記借受金返済債務の存在を前提として為された所謂有因契約と解すべきこと勿論であるから(若し、本件でみる如き求償契約が債務者に無因債務を負担させる趣旨のものと解するときは、貸金債権者において意思相通じた適宜の第三者を債務者の連帯借主に仕立てたうえ、その第三者と債務者との間に本件の如き求償契約を締結せしめることにより、右第三者を介して容易に利息制限法による制限を潜脱して高利を収奪し得ることになる)右求償契約における利息の約定中、前記借受金についての利息債務にして前示の如き理由で存在しない部分をも、なお存在するものとの前提に立つて約されたと認められる部分、即ち前示求償契約における利息の約定中、利息制限法による前示の制限利率を超過して約された部分は無効といわなければならない。そうとすると、前段説示の如き弁済充当により右超過部分の利息として支払われたことになるものは、該部分の利息の弁済として無効であることは当然であり、その支払は、唯単に前示求償契約による求償債権に対してそのどの部分とも特定せずに為されたと同視すべきであるから、当該支払部分は右求償債権に対して民法四九一条の規定に則つて充当されるべきである。

なお、民法四九一条の規定による以上の如き充当をしてもなお余りがあるときは、その充当に関しては新らたな支払があつたと同視して前段に説示したところに従うべきである。

(七)、そこで、被告が原告に対し本件貸金債権を含む前示四口の債権に対する弁済として支払つた(四)に判示の支払金、即ち別表三の最上段(1)ないし(26)(但し支払の順は、(1)ないし(20)、(23)ないし(26)、(21)、(22))記載の二六口の金員は、それぞれ、その支払の都度、前示(五)及び(六)に説示したところに従つて弁済充当されたことになるが、この充当関係を示すと、別表三の第二段以下に記載のとおりとなり、これによれば、被告は原告に対し本件貸金債権についての、弁済として、元本のうち金八八万五、〇〇二円ならびに昭和三四年二月二〇日から昭和三六年七月二〇日までの利息および遅延損害金を支払つたことになるから、被告の原告に対する本件貸金債務は右の範囲でのみ、弁済によつて消滅したことになり、その余については未だ弁済がないことになる。三、したがつて、被告は原告に対し残元金二二六万四、九九八円とこれに対する昭和三六年七月二一日から右完済に至るまでの利息制限法四条所定の制限(年三割)の範囲内である前示約定利率即ち一〇〇円につき一日金八銭の割合による遅延損害金とを支払う義務があり、原告の本訴請求は被告の右義務の履行を求める限度において正当としてこれを認容し、その余は失当として棄却すべく、訴訟費用の負担については民事訴訟法九二条本文を、仮執行宣言について同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

別表一(原告の主張)

Ⅰ 二五〇万円口の債権に対する充当

<省略>

<省略>

Ⅱ 五〇万円口の債権に対する充当

<省略>

Ⅲ 本件貸金に対する充当

<省略>

Ⅳ 六〇万円口の求償債権に対する充当

<省略>

別表二(被告の主張)

<省略>

<省略>

別表三(当裁判所の認定)

<省略>

Ⅰ 二五〇万円口の債権に対する充当

<省略>

<省略>

<省略>

Ⅱ 五〇万円口の債権に対する充当

<省略>

Ⅲ 本件貸金三一五万円口の債権に対する充当

<省略>

Ⅳ 六〇万円口の求償債権に対する充当

<省略>

<省略>

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